2025.08.08 11:16図書館には妖精がいる ④ 私が担当さんと会うのはこれが二回目だ。私がこのベッドで目を覚ました時、担当さんはゆあれちゃんのベッドの端に座っていた。真夜中で、水色のベッドの主はまだ書庫にいた。担当さんは、私たちについて基本的なことを淡々と教えてくれた。図書館の妖精は、夜の書庫で物語を食べる。すると、胸に下げたインク瓶にインクが溜まる。妖精のインクを運命の人間に渡すまで、図書館から出られない。あとは「おともだち」に聞いて、と言...
2025.08.08 11:16図書館には妖精がいる ③ その夜も、私は新聞を、ゆあれちゃんはいろいろな本を——新着本、雑誌、絵本、趣味の本や旅行ガイドなんかを——読み、いつものようにカウンター裏の壁から自室に戻った、はずだった。「……!?」 背中から着地したベッドが、ごつごつと奇妙に膨らんでいて、私の身体はこわばる。「あーっ! 女史!」 隣でゆあれちゃんが叫んでいる。 長く真っ直ぐな黒髪を指先でさらさらと整えながら、その人は言った。「抜き打ち検査に来...
2025.07.08 13:25図書館には妖精がいる ② 図書館の妖精は地下に住んでいる。 夜明けの少し前、カウンターとバックヤードを仕切る煉瓦柄の壁にもたれて、背中に少し力を入れる。すると、壁がすうっと溶けて、私たちはふわんと落下してゆく。浮遊感の後、どさっ、と自分のベッドの上に落ちるのだ。ゆあれちゃんの寝具は水色にピンクのレースが、私のには黒に赤のレースが付いている。子供用の小さなベッドが二つ並んで、それでほとんどいっぱいの、狭い部屋。よく磨かれた...
2025.07.08 13:24図書館には妖精がいる ①「時間ってさあ、狭すぎるよね」「狭い?」 誰もいないカウンターの奥の壁にかけられた時計は、三時を指している。正面玄関の上の大きなガラス窓から注ぐ月明かりの中で、ゆあれちゃんは堂々と床に寝転んで頬杖をついていた。片足を持ち上げてフラフラ揺らすから、フリルとレースの桃色スカートから、ふわふわのドロワーズが覗いている。パフスリーブの上で、薄桃色のくせっ毛が揺れる。「だって、こんなにたくさん……」 そう呟...
2025.03.06 04:08【資料】メゾンガールズの外見とファッションについて7つの質問【質問】①きれい/かわいい/かっこいいのうち似合うもの②髪と目の色③服④バッグ⑤靴⑥メイク⑦その他桜間①かわいい。②桜色または淡い金の、ふわふわの髪。目は淡い水色。鼻のあたりにそばかすがある。③古着屋さんで売ってそうな、カントリー調のワンピースまたはブラウス+ミモレ丈スカートが多い。小花柄、ギンガムチェック、細いストライプ・細かいドット。白地に、ちょっとくすんだ深い色(赤、青、ブラウンなど)が好き...
2025.03.06 04:05【資料】メゾンガールズに3つの質問参考にしたのはこちら(あんスタの「絶対に推しができる部屋」)。【ひとり⚫︎⚫︎はどこまでできる?】桜間:映画館とか、カフェとかでのんびりするのは好きよ。でも、わたしはあんまり、お出かけはしないのよね……メゾンの中でみんなと過ごす時間がいちばん落ち着くわ♪ゆあれ:これ何が最も上にあるもん? ひとカラ行くし、ファミレスも行くし……待って、調べる。ああー……この中だと「温泉旅館」かな? 一人旅は3泊くら...
2025.03.06 00:23【資料】メゾンガールズの人称表わたしたちがどんなふうに喋るか、まとまって書いておいたことがなかったのね。必ずってことはないのだけど(生きているからね)、わたしが聞いてきたことをここに残しておくわね。(桜間)
2025.03.02 04:58眠いなら紅茶を飲めばいいじゃない 居間の明かりが点いているな、とは外からでもわかっていた。だけど、中にいたのが桜間さんでものとみでもなかったのには驚いた。水色のパジャマの肩に下ろされている髪が、まだ微妙に濡れている。ドライヤーに飽きたのだろう、いつものように。「明日、お店開ける日じゃないの」「うお! びっくりした!」 がば、と振り返ったゆあれは、やっぱり眠そうな目をしていた。「え、遅かったねえ。おかえり」「飲んじゃったから。楽し...
2024.07.26 11:53デッケェ桜間さん 家に帰ったら家がなくなっていた。それを「家に帰ったら」と表現していいのかわからない。両隣のお宅は無傷なのが救いだ。私たちの暮らすメゾンと隣の建物との間の細い隙間から、髪をポニーテールに括ったのとみが、小走りに出てきた。「おかえり、LINE見た?」「見てない」「桜間さんが大きくなっちゃって、メゾンが壊れたから、今日裏庭でキャンプになったの」「今北産業……」 で、私たちの大家さんはどこで寝るんだろう...
2022.12.06 15:00桜間さんが風邪を引くメゾン猫ゆゆ+喋蔦子 鉛筆で何か書いていた。かりかり、かりかり。黒鉛が潰れ、紙に木が擦れる。かり、かりり……。目が覚めても、音は続いていた。めがねをかけて、ドアをそっと開くと、なー、と、何か鳴いた。「ねこ……」 白い猫が、灰色の瞳で見上げていた。首に空色のリボン。親しげに、なー、と鳴いて、足に擦り寄る。
2022.07.23 15:00温泉合宿に行きたい話「あたしはパス」 目の前のフォークを掴もうと身を乗り出しながらのとみが呟いて、コンソメスープを啜っていたゆあれが、ごぼ、と言った。「ちょっと、やめてよ」 隣で、しっしっと手を振る冬嶋に、ゆあれが何事か口の中でもにょもにょと呟く。ごめん、だそうです、という顔を蔦子がして、ゆゆしと桜間が温かく頷いてみせた。「伝わってるよ」「わかるよ」「優しすぎ」 冬嶋が口を尖らせ、サラダのミニトマトにフォークを刺した...